ソウル照覧

ソウルシリーズと趣味の民俗学・歴史等を考察しているブログ

【ダークソウル考察】墓王ニトは最初の<死者>にして<不死の英雄>だったかもしれない説~4~

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ニトだけが<はじまりの火>で死んだのはなぜか

だが一つ大きな疑問が湧き上がる。<はじまりの火>から王のソウルを

得るには、先述したように火に触れることが前提条件となる。

 

ならば無論ニトだけでなく、他の者たちにも同じ条件が課されているはずである。

 

ニトが<はじまりの火>に触れることで焼け死んだのであれば、グウィンらとて例外なく焼け死ぬハメになるはずだが、王のソウルを得た者たちの中で<死者>と呼ばれているのはニトだけだ。

 

なぜ他の者たちは、火によって死ななかったのだろう。 

 

しかし、この疑問に対する突破口を与えてくれるのが五行思想であった。

 

ここで先に挙げておいた、「ニトは五行において金行」という私見が活きてくるのである。

 

ニトが焼死した理由は五行の相剋(そうこく)にあった!

五行思想には相剋(そうこく)という概念がある。これは属性の働きが相手の属性を打ち滅ぼすという関係である。

 

要はゲームなどで我々にも馴染み深い、属性相性による有利不利の概念である。

 

五行思想では火剋金(かこくごん)。金行を滅ぼすのは火行である。

 

すばわちニトが「金行」の存在であれば、火行による影響を受ければ

ひとたまりもない。無論、<はじまりの火>に触れればどうなるかは明白である。

 

ではグウィンらはどうなのだろうか。先程筆者はグウィンとイザリスの魔女を五行における木属性に比定した。

 

大抵の読者はここで「グウィンらが木行の存在なら、

ニトと同じく火行が弱点なのではないか?」と思われるだろう。

 

ここがややこしいのだが、実は五行思想においてはそうはならない。

 

五行思想における木と火の関係は、相生(そうせい)である。相生とは木火土金水の流れで万物が生み出されていく概念である。

 

相生における木行と火行の関係性は木生火(もくしょうか)。つまり

木が燃えて火を生むという概念なのだ。

 

五行において火は木を滅ぼす存在でなく、

木によって火が生まれるという関係性なのである。

 

この論拠に基づくと、火属性に滅ぼされる関係にある金属性のニトとは異なり、木属性のグウィンとイザリスの魔女は火属性に殺されることは無いというわけである。

 

筆者をはじめ多くの読者が木が火に弱いと判断してしまったのは、

ゲームや小説などでよくある「正統派ファンタジーもの」からの影響が大きいためだろう。

 

筆者もまた、一般的な「正統派ファンタジーもの」による影響から、

単純に木行を植物の属性だと思い込み、木は火に弱いという固定観念に縛られていた。

 

だが五行において木行とは、風と雷をも含む自然の概念を<木>という

属性にまとめたものであり、一概に植物を指すものではない。

 

木は火で滅ぼされるという概念に染まったままであったなら、

ニトの疑問に対する答えを得られなかったであろう。

 

宮崎D及びダークソウルシリーズの開発陣は、こうした我々が持つ

固定観念の隙を見事に突いたトリックを忍ばせていたのである。

 

また「正統派ファンタジーもの」に導入されたタイプ相性の概念は、

五行思想が原型と思われるが、よくよく検証してみれば、

大抵の場合元となった五行思想とは少々異なる形となっている。

 

あえて言わせてもらえば、五行思想の概念により忠実なのは、

一般的に普及している「正統派ファンタジーもの」ではなく、

「ソウルシリーズ」の方だと言えるのかもしれない。

 

~次回に続く~

 

※ダークソウルの解釈はこれが正解というものがなく、どう解釈するかは個人の自由です。あくまで一つの考察としてお楽しみください。