ソウル照覧

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【ダークソウル考察】墓王ニトは最初の<死者>にして<不死の英雄>だったかもしれない説~18~

 

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おとなしく寝ていたニトが襲いかかってきたのは、不死を薪にしないためだった?

 

ダークソウル1では結局、何も知らぬ不死によってニトは討たれる。

だがそれについて後悔は無かったのではないか。

 

墓王ニトはシナリオ上、必ず対決することになる。しかしその流れを

よく見ると、ニトは通常の敵とは明らかに異なる挙動をしている。

 

まず初対面では不死がニトの領域に入ったとしても、攻撃されることはない。

 

それどころか<墓王の誓約>を結ぶことができ、武器まで贈呈してくれる。

 

このことからニトはたとえ<神の枷>が外れかけ、人間が不死化したとしても、グウィンのように敵対する意志は無かったと解釈できる。

 

その理由は先述したように、<神の枷>を嵌めていた張本人であるニトが、人間を解放すると決意したからであると筆者は考えている。

 

ニトと敵対するトリガーとなるのは、フラムトから<王の器>を入手した後である。

 

<王の器>は王のソウルを注ぐ器であり、火継ぎをする薪を作るための

装置と言っても良い。

 

ニトは人間に火継ぎさせることなど望んでいない。だからこそ、

<王の器>を与えられた時点で闘うことになるのではあるまいか。

 

ニトが誓約者を使って災厄をばら撒いていたのには理由があった?

筆者がそのように考えた論拠として、<墓王の眷属>がある。

 

これは墓王ニトとの誓約であり、誓約アイテム<死の瞳>を使って自分と同じエリアにいる他世界の不死達を呪い、災厄をばらまくことができるというものである。

 

<墓王の眷属>が他世界に振りまく災厄とは、具体的に言うと難易度の上昇である。

 

難易度上昇の内容と災厄を解く方法は以下のようになる。

 

  • フィールド上の雑魚敵やボスが強化される
  • 呪われた他世界の不死が2週目以降であった場合、敵(赤MOB)が追加される
  • 災厄(難易度上昇)を取り除くには、<死の瞳>で呪いを発動した不死の世界に侵入して倒す必要がある

 

<墓王の眷属>の誓約を結んだ不死によって災厄がばら撒かれると敵が強くなる。

 

つまり攻略の難易度が上がるわけで、呪われた側にしてみれば嫌がらせ以外の何物でもないのだが、ニトの誓約はなぜこのような効果になっているのだろうか。

 

一応のところ誓約の絆を深めるためのアイテムとして<死の瞳>があり、

これをニトに捧げことで誓約レベルが上がるので、<墓王の眷属>には

<死の瞳>を集めるという目的がある。

 

だがダークソウルにおける誓約には、単に誓約レベルを上げる以外にも、ロールプレイ的な要素がきちんと織り込まれている。

 

ダークソウルの世界を考察するにあたって、このような要素を単なる寄り道程度の認識で終わらせてしまうには……つまりはあまりにももったいないと筆者は感じるのである。

 

ダークソウル1におけるそれぞれの誓約を見てみると、以下のような

ロールプレイ要素となる設定が見て取れる

 

  • 白教/太陽の戦士/王女の守り→白教、グウィン一族の信仰者、火継ぎの賛同者
  • 暗月の剣→グウィンドリンの信仰者、父なるグウィン姉なるグウィネヴィアの陰、復讐の代行
  • 混沌の従者→蜘蛛姫様に人間性を捧げ苦しみを軽減する
  • 森の狩猟者→<黒い森の庭>の守護、狩猟団との友好関係
  • ダークレイス→カアスの導きを受ける者、火の簒奪者
  • 古竜への道→謎(竜となり人を超越した生命となる?)
  • 墓王の眷属→ニトの信仰者

 

このように誓約の多くが、プレイヤーの方向性に関わる

ロールプレイ要素を含んでいる。

 

ここで注目したいのが神々と敵対者であるカアスとの誓約である。神々に関連する誓約は、そのまま神々の思想が誓約者に対しても大きく影響すると取れる面がある。

 

たとえば白教/太陽の戦士/王女の守りの誓約は、グウィン王家への信仰を持つという要素があり、すなわちこの誓約を結ぶ者は基本的に、火継ぎや火の試練への疑問など持たないとも解釈できる。

 

そしてカアスとの誓約であるダークレイスは、神々の真意や火継ぎの

欺瞞を知ったことから、火の簒奪を唆すカアスの導きを受け入れた者

であるという解釈が可能である。

 

つまり神々や世界蛇であるカアスといった歴史を動かす存在との誓約を結ぶことは、そのまま彼らの思想を受け入れた者としてのロールプレイが可能となるのである。

 

白教/太陽の戦士/王女の守り/暗月の剣/ダークレイスのように、神族または世界蛇のような歴史を動かす存在との誓約は、それらの手足となる誓約でもあると言えるだろう。

 

ここで一柱の異質な神の存在を忘れてはならない。そうニトである。

 

墓王ニトもまた死を司る神であり、誓約を結ぶことができるのだが、

いかんせん彼は全く己のことを語らず終いなので、彼の目的もまた明かされてはいない。

 

より具体的に言うなら、『ニトは誓約者を使って何をしたかったのか』が他の誓約と違って明解な説明がすっぽりと抜け落ちているのである。

 

それを言うなら<古竜への道>も同じく誓約元の明確な目的が語られないままだが、話が脱線するのでここは割愛させていただく。

 

まずはニトである。彼は誓約者を使って世界に災厄をばら撒く活動

推進していたわけだが、なぜそんなことをする必要があったのだろうか。

 

<墓王の眷属>が持つ、他者の世界に災厄をばら撒くという特徴からして異質にも程がある。ニトもまた神の一柱であるのだが、グウィンらのように火継ぎをさせようと仕向けるような意図が全く見えない点がどうにも解せない。

 

だがニトが『神々の一員』としてではなく、彼個人の意志によって災厄をばら撒くことを仕向けていたとしたら?

 

またニト自身が、人間を食い物にするグウィンらの火継ぎの思想に対して、反逆の意志を持っていたとしたら?

 

それらを踏まえて考察すると、なぜおとなしく寝ていたニトが襲い掛かってきたのか、そしてなぜ誓約者を使い、敵を強化するという嫌がらせのような災厄をばら撒いていたのか、その理由がうっすらとながら見えてくる。

 

~次回に続く~

 

※ダークソウルの解釈はこれが正解というものがなく、どう解釈するかは個人の自由です。あくまで一つの考察としてお楽しみください。